萬年寺
真宗大谷派
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2007年3月 花は言葉を持たないが 唯 いのち尊しと 今年も咲く

No 23 /2007/5/17


 3月に入ると日本列島を桜前線が移動する。函館は4月下旬から5月にかけて今年も可憐な花を見ることができるだろう。
 人の心に安らぎを与える花に、昔から人の姿を譬えてきた。「たてば芍薬、座れば牡丹、歩く姿はゆりの花」などは、その代表の言葉となるだろうか。

こんど咲かせる 花びらは 冷たい色か 熱い色か 教えて下さい わかるように 花の命は 短いけれど 咲いてみせます 命花

瀬川英子さんの『命花』という歌の歌詞である。花に、尊きいのち・人生を見つめたのだろう。また、実業家で有名であった松下幸之助氏は「自分の世界に閉じこもってしまったら人間の命の花は咲かないよ」ということを生前に言われたという。
 花はそれ自身言葉を持たないが尊きことを教えてくれる。その花とどう向き合い、私はどんな命花を咲かすことができるだろう。







 冬の間じっと耐えて来た草木が芽吹く季節となりました。穏やかな時節に仏法のご縁を結ぶという日本古来のお彼岸を迎えます。お寺参りで法話を聞いたり、お墓やお骨堂へのお参りをなさる方も多くおられることでしょう。
 戦争や事故などの犠牲者の追悼に各国で遺族の傷心を癒すために、歌あるいは詩の紹介をされている曲があります。日本でも昨年末紅白歌合戦で秋川雅史さんがうたわれた『千の風になって』という曲です。

 私のお墓の前で 泣かないでください
 そこに私はいません 
 眠ってなんかいません
 千の風に 千の風になって
 あの大きな空を 吹きわたっています

 秋には光になって 畑にふりそそぐ
 冬にはダイヤのように
 きらめく雪になる
 朝には鳥になって
 あなたを目覚めさせる
 夜は星になって あなたを見守る

 私のお墓の前で 泣かないでください
 そこに私はいません 
 死んでなんかいません
 千の風に 千の風になって
 あの大きな空を 吹きわたっています

 この歌の原作は、お母さんを亡くし神経衰弱を患って、ただ泣くばかりの友達に向けて書かれた詩だそうです。
 色々な形になって亡き人はあなたを案じていると、励ましの意味で表現されたかと思いますが、私どもが亡き人をどう受け止めるのかという問いかけが、この詩にはあると思います。
 見方をかえますと、風を風として、雪を雪として、鳥を鳥として…それぞれをありのままに私どもに知らせるようにはたらいているのだと言っておられます。この私は風をみても心地よい風は善い風、雪もスキーや雪遊びでは善い雪であり、強風や大雪は悪い風や雪としてしまいます。風や雪に都合を付けているのが自分の方なのです。
 その発想で全てを見て行きますから受け入れられることと受け入れられないことが出てまいります。そうなると自分の受け入れられないことは全て自分以外の責任にしたり、他を責めることで自分を守ろうとします。この現われが、家庭や家族の崩壊など社会的に殺人事件にまでなって見せられている姿であります。
 親鸞聖人は『末燈鈔』の中で、「弥陀仏は自然(じねん)のようを知らせん料なり」といわれております。また、自然とは私たちの善し悪しのおよばぬことであるとも申されます。風を風として、雪を雪として、目の前の相手をその人として、ただあるがままに受け止められるところに「自然のよう」、はたらきがあるといわれます。そして、その料が弥陀仏であると。料というのは、材料・種・手掛かりということです。
 このことを、受けて「千の風になって」の言葉を見てまいりますと、亡き人は私どもにとって物事をあるがままに見せようとはたらいておられることではないでしょうか。言葉を換えれば弥陀仏と同じ世界にあって私どもへはたらきかけて下さる。あらゆる本当の姿を、真実として私に知らせるはたらきとして亡き人が今現にはたらきかけているのでしょう。
 そうしますと、お墓やお骨堂参りだけで亡き人を偲んだということになるのでしょうか。弥陀仏と同じ世界から真の理を知らせようと願われはたらかれているのですから、弥陀仏の教え、仏の教えを私どもが聞いて自ら目覚めて行くことが本当に亡き人を偲ぶ道であります。聴聞、お寺にお参りしてご法話を聞く、聞法会に足を運ぶ、この歩みが亡き人を訪(とぶら)うことでありますし、お彼岸を迎える私どもの姿であります。
 今月のことばに「花は言葉を持たないが、唯 いのち尊しと今年も咲く」とありますが、咲く花も自然(じねん)のようとして、はたらきとして尊きいのちを私どもへ知らせていることでしょう。言葉を持たないということは、善し悪しを計らわず、ただ、花を花として生きているのだと表しております。


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